SOSの猿 <伊坂 幸太郎さん>

<SOSの猿> 感想

他人の「SOS」を見逃せない遠藤、
「ものごとの原因」にこだわる五十嵐。

どちらも、あたしの性格の一部分と似ており、とても興味深い登場人物だった。

ふたつの話が同時進行し、最後につながるというパターンは、
伊坂さんの作品ではよくあるので、それについての戸惑いはなかった。
むしろ、このふたつがつながるであろうと思われる箇所を
見つけるたびにわくわくした。


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中央公論社 伊坂 幸太郎 「SOSの猿」を語る(伊坂 幸太郎インタビュー)


<SOSの猿> あらすじ

漫画家・五十嵐大介さんと共同で構想し、
それぞれが小説とコミックで競作した作品だそうだ。


家電量販店でエアコン販売担当の遠藤二郎は、
他人の発する「SOS」を見過ごせない性格である。
「辺見のお姉さん」は、息子・眞人のひきこもりで悩んでおり、
遠藤に悪魔祓いを依頼する。

桑原システムの社員・五十嵐真は、
300億円の損失を出した菩薩証券の株誤発注事故の原因調査を命じられる。
五十嵐真は、「ものごとの原因」にこだわる性格である。
こちらの話は、孫悟空の語りという形で進行する。

このふたつの話が交互に繰り返され、後半にはひとつになる。



<SOSの猿> 好きなことば


「SOSの猿」
この小説の中にも、いいことばだなぁと思うフレーズがあった。
それを、ここに残しておきたいと思う。

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(P)7

どこかでね、誰かが、痛い痛い、って泣いてるんだよ。
だから助けに行くんだよ

 サイレンを鳴らして走る救急車を見た幼稚園児の二郎は、
 「救急車、どこに行くの?」と尋ねたとき、母親が答えた言葉。

 うん、こういう説明のできる母親に育てられたから、
 二郎は、他人の「SOS」に敏感になったんだろうな。
 「SOS」に気がついたときは、サイレン鳴らして、人や車を押し避けてでも
 そばに行ってあげなきゃいけないんだと思うよ。

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(P)76

二郎は、SOSを発していう人間を救えないと嘆いているが
そうではなく、キャッチしているだけでも充分、救いになって
いる。そうは思わないか


 そうか。安心した。
 何もできないと思っていたけど、キャッチしてあげることも大切なんだね。

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(P)83

分かる、と無条件に言い切ってしまうことは、分からないと
開き直ることの裏返しでもあるんだ。そこには自分に対する
疑いの目がない

 「我が子のことは何でもわかる」という母親に対して思った言葉。
 
 そうなのかもしれない。
 それは、自分に対する過大評価による自信なのだろう。

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(P)84

『子供のことが分からないけど、分かりたい』そう思うくらいが
 ちょうどいいんじゃないか
 
 ひきこもりの息子を心配する母親に対して言った言葉。
 
 親、特に母親というものは、子供を心配するあまり、 過干渉になりがち。
 その様子を、第三者からみれば、「もう少し距離をおいた方がいいよ」と、思える。
 子育てに悩んでいるときは、ちょっと冷静になって、他人の言葉を聞くことも
 大切かもしれない。
 


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(P)286

いつまでも、くよくよしてればいいんですよ

 よかった。
 性格を変えることは難しい。
 くよくよしてればいい、そう言ってもらえると、
 今のままでいいんだよと、そう言ってもらえたのと同じ。安心した。


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(P)288

誰かを救ってあげたいという、というこだわりで、それは
自分自身の存在価値を証明したい、
という弱さから生まれているらしくて。

 そっか。実はそういうことなのね。
 人は、自分の存在をアピールすることが、
 生きていくためには重要だと、思っているのかもしれない。

 



<SOSの猿> 作品間リンク

「SOSの猿」を初めて読んだ。
作品間リンクを探ってみる。

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田中 徹
   
   (田中 徹は)巨大な罪の意識にぺしゃんこになり、衣服さえぼろぼろになったか
   のような姿で、足を引き摺ってやってきてもおかしくはない
                                        P127より
 
   「SOSの猿」での田中は、実際には足を引き摺っているわけではないが
   他の作品に出てくる「田中」を連想させる。



「オーデュボンの祈り」
    足が悪く、代書の仕事をしている、鳥が好きな男。
「魔王」                   
    足を撃たれるサッカー選手 
「陽気なギャングな地球を回す」   
     どんな鍵でもをつくってくれる男
「グラスホッパー」           
     杖をついているホームレス
「ゴールデンスランバー」            
     足を骨折して入院している患者
「モダンタイムス」            
     脚を少し引き摺るようにしていたゴッシュのシステム管理者


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